スリランカ

後藤 健介 助教
熱帯医学研究所 生態疫学

スリランカでは、すべての公立病院において医療費が無料であるなど、優れた医療システムが構築され、平均寿命も71歳(WHO 2009)と途上国の中では比較的長寿国ですが、先進国と同様に生活習慣病が問題化しています。高齢化と生活習慣病等の慢性疾患患者の増加は、医療財政を圧迫し、将来的に国による医療費全額の負担は困難になるとの予測もあります。このため、生活習慣病の実態を把握し、これを予防することは重要な懸案事項です。

ところが、スリランカでは生活習慣病対策への取り組みは始まったばかりで、対策を講じるための基礎データとなる生活習慣病の実態把握ができていません。病院では、外来患者や通院患者の患者情報が登録・収集されておらず、患者の年齢層や住所、通院や罹患の履歴を把握できない状況だからです。

そこで、我々は現在、病院で患者情報を効率よく収集・管理するために、生体認証の中でも制度が高い静脈認証技術を応用することを検討しています。個々人で唯一無二の静脈パターンを個人IDとして患者カードの代わりとすることで、いち早く患者検索ができるようになるなど、効率よく患者情報を管理することが可能になるのです。しかも、この個人IDを統一IDとすることで、他の病院との患者照合システムにも応用できるほか、他の種々のデータとリンクさせることも可能にします。

現在、富士通研究所の手のひら静脈認証技術を、実際に在スリランカ日本大使館やスリランカ保健省、病院、大学などで試技をしながら説明し、静脈認証を用いた患者情報システムをPRしています。そして得られた様々な意見を参考にしながら、富士通研究所とともに開発・実用に向けて取り組んでいます。

公立病院の訪問を終えて病院スタッフと プロジェクトの途中成果の国際会議での発表と試技
公立病院スタッフへの説明と試技 公立病院スタッフへの説明と試技 在スリランカ日本大使館の訪問を終えて粗大使と

CICORNニュースレター第1号(平成25年5月号)掲載記事
http://hdl.handle.net/10069/34012