~マラウイで研究拠点づくりを目指して~再興感染症ウイルス及び媒介蚊の調査方法開発

前川 芳秀 熱帯医学研究所客員研究員
JICA専門家

ザンビア、モザンビーク、タンザニアに囲まれ、九州と北海道を併せた程度の国土面積に、1,320万人の人が、のんびりと大好きなメイズに囲まれて過ごす国、それがマラウイだ。国土の20%を占めるマラウイ湖は、500種以上の固有魚類がいるとされ、その筋の者には知らぬものはいないと言われるが、ここが住血吸虫の一大メッカであることも知って欲しい。さらに、北部にはアフリカ睡眠病、最南部にはフィラリア症が蔓延すると聞く。感染症研究の観点からすれば、その豊富な研究資源に目を細め、眉を曇らす。

マラウイ国内には様々な病気があるが、学術的な証拠がほとんどなく、その実情が未だ不明である。研究者には宝の山であり、誰も知らない秘境中の秘境であるこの感染症空白国に、最初の一色を入れるために、JICA専門家として赴任した。

本案件はJICA-JSPSプロジェクトと呼ばれ、ODA事業である。プロジェクトを通じ途上国に研究基盤を築き、現地研究者との共同研究を通じてキャパシティ・ビルディングを支援する。また、専門家を通じて日本国内の研究機関との交流やさらなる研究の発展が望まれ、研究による国際貢献が期待される。フィールド屋冥利に尽きる案件だ。

この事業がユニークなのは、私が知的パートナーズと呼ぶ長崎大学やJSPS、大使館を巻き込んだ活動ができる事だ。先のワークショップでは研究者古流と学生や若手研究者育成のために日本への国費留学説明会を行い、『種から育てる』研究基盤形成に奔走している。

で、この国で何をしたか?ここには書き切れないので割愛したいが、マラウイで初めて全土の蚊相を調べ、3属9種の媒介蚊による8種の疾患の可能性を明らかにした。さらに1疾患のウイルスと疑われる結果が検出され、最終確認を行っている。もし確定されればマラウイで初記録となる。

そして、築きあげた研究基盤と知的パートナーズに叩き上げられた種が、感染症空白カラフルな色に染まる日を夢見ている。

CICORNニュースレター第1号(平成25年5月号)掲載記事
http://hdl.handle.net/10069/34012