高橋 純平 助教
国際連携研究戦略本部
長崎大学ベラルーシ研究拠点は、チェルノブイリ原発事故の甚大な影響を受けたベラルーシ、ウクライナ、ロシアの旧ソ連邦三カ国において、放射線の健康影響についての共同研究をよりスムーズに進めるための拠点として、2008年8月に開設されました。
ベラルーシ拠点の主な役割は、(1)上記三ヶ国の諸研究・教育機関(主に長崎大学と学術提携のある)との共同研究コーディネイトおよび諸懸案事項調整(2)学生・研究者交流における諸調整および実際の受入れ・派遣時のケアです。
チェルノブイリ事故後4−5年を経て、ようやくソ連が外国からの支援機関・研究者を受け入れるようになった1990年頃から、長崎大学の研究者はチェルノブイリ周辺地域に頻繁に出かけています。研究のためだけでなく、現地での大規模な健康診断を行い、現地の医療・研究機関の専門家を継続的に研修のために長崎に招いたという、現地の医療への貢献が広く認められ、どこへ行っても、日本または長崎、というだけで非常に好意的に接していただけています。
最近の学生・院生の受け入れ実績としては、医学部のリサーチセミナーの学生数名のベラルーシ研修受入れ(毎年1月)、国際健康開発研究科の海外研修受け入れもベラルーシ(2010年)、ウクライナ(2011年)に各1名ずつ、原研国際の大学院生による共同研究実施滞在(ウクライナ2012〜13年)、ベラルーシ医科大からの大学院生受入れ(2011年〜)などが上げられます。
私個人は4年前までフリーの通訳をしていましたが、原発関連の仕事が増えていました。中国を初めとする諸外国で急速に原発建設が進んでいる状況を知り、このままこの仕事を続けていて外国で事故が起きたら後味が悪いだろうな、という思いを強くしていた折に、現職のオファーをいただきました。まさかその2年後に日本で事故が起こり、最先端で健康影響対策をする先生方をサポートする仕事をすることになろうとは夢にも思いませんでした。
福島原発事故を受け、日本ではチェルノブイリ事故後の対策に学ぼうという動きが活発しています。視察のための調整依頼をいただくこともあります。原研が全国的な共同用施設となると、ベラルーシ拠点も活用していただく機会が増えることが予想されます。
チェルノブイリ原発事故被災国に開設された日本の大学には類を見ない研究拠点をなお活用していただけることを期待しております。
CICORNニュースレター第1号(平成25年5月号)掲載記事
http://hdl.handle.net/10069/34012