日本から世界へ 世界から日本へ~リンパ系フィラリア症制圧に向けて~

一盛 和世 ディレクター
フィラリアNTD室

現在、熱帯病の多くはその根絶、制圧に向けて対策が進められています。特にリンパ系フィラリア症(LF)は世界保健機関(WHO) の率いる世界制圧プログラムのもと、蔓延国政府、ドナー、NGO、製薬会社、大学・研究機関らによるグローバルレベルでの産官民学連携パートナーシップによって、人類の一大事業として、着実に制圧目標へと歩みを進めています。日本にもかつてLF が蔓延していた時代ありましたが、1970年代に根絶することに成功しました。このような経験を持つ日本には、地球人としてグローバルな視野を持てる人材を育成し、世界と恊働して制圧プログラムに貢献していくことが求められています。

この目的を達成するための拠点としてフィラリア NTD 室は次の4点において活動しています。

  1. 情報データの収集および管理
    ・LF、顧みられない熱帯病(NTD)に関する情報およびデータを世界中から収集管理
    ・熱帯病対策に関する国内外会議等への参加貢献
  2. 国内外ネットワークの構築
    ・ネットワークの構築、運営
    ・パートナーシップへの日本の参加促進
  3. 日本国内向け情報発信、啓蒙活動
    ・熱帯病対策に関する講演、集会、メディア
    ・一般市民に向けた情報の発信、資料の展示
  4. 熱帯病分野の人材育成
    ・大学生や専門家向けの講義、アドバイス
    ・関連資料、教材の作成

各項目に従い2015 年度の活動について報告します。

1.情報データの収集および管理
・共同研究 「Completing the End Game: Achieving Lymphatic Filariasis (LF) in the Pacific Island Countries (with James Cook University) 」プロジェクトの中で太平洋諸国におけるリンパ系フィラリア症制圧完了を伝播阻止により確認するため、関係各国の資料・データを収集。Catalogueを作成し、分析および解析に使用。活動記録をまとめたPacELF Way book No.2出版に向けてプロジェクト進行中。

・FAO-APHCA/OIE/USDA Regional Workshop on Prevention and Control of Neglected Zoonoses in Asia へKey Speaker として参加、7月15 ~ 16 日帯広

・WHO-15th Meeting of The Western Pacific Regional Programme Review Group on Neglected Tropical Diseases出席、7月20 日~ 22 日フィリピン(ダべオ)

・WHO-Meeting of National Programme Managers、Preventive Chemotherapy Neglected Tropical Diseases 出席、9月28 日~ 30 日and Regional Programme Review Group Meeting、 10 月1~2日ベナン(コトヌー)

・アフリカにおけるNTDs 対策のための国際共同研究プログラム課題評価委員会 出席、10 月2日、 国立研究開発法人日本医療研究開発機構、東京

・研究集会「太平洋リンパ系フィラリア症対策会議」開催、10 月17日、 長崎大学、 長崎

・WHO-Meeting of National Programme Managers’ on Lymphatic Filariasis (LF) and Soil-Transmitted Helminthiasis (STH) 出席、 11 月10 ~ 11 日、インド(ニューデリー)

・WHO-12th meeting of the Regional Programme Review Group (RPRG) meeting 出席、11 月12 ~ 13 日インド(ニューデリー)

・平成27 年度第二回日本熱帯医学会理事会 出席、12 月4日、 大阪大学、 大阪

・第2回日本熱帯医学会男女共同参画推進委員会企画シンポジウム オーガナイザーとして出席、12 月6日、 大阪大学、 大阪

・沖縄感染症研究拠点形成促進事業「動物媒介性感染症対策の沖縄での施策提言とネットワーク形成に関する研究」沖縄での施策検討第一回会議 出席、12 月9日、 沖縄

・DNDi Clinical Expert Meeting on Lymphatic Filariasis 参加 発表 ”PacELF – Eliminating lymphatic filariasis in the Asia Pacific”、2016 年1月22 ~ 23 日インド(ニューデリー)

・第33 回日本オセアニア学会研究大会シンポジウム 発表「太平洋リンパ系フィラリア症対策計画(PacELF) とその成功」、3月19 日、 マホロバ・マインズ三浦、 神奈川

・東京都蚊媒介感染症対策会議委員として活動

2.国内外ネットワークの構築
・グローバルヘルス技術振興基金(G-HIT)フォーラム参加、2015 年6月5日、東京

・サモア大使館独立記念式典 参加、2015 年6月12 日、東京

・北里大学 意見交換、7月22 日、 北里大学、 東京

・東京理科大学 意見交換、8月7日、 東京理科大学、東京

・ゲイツ財団会議-Coalition for Operational Research on Neglected Tropical Disease 出席、 10 月22 ~ 23 日、米国(フィラデルフィア)

・Advocacy 活動「The Japan Time」12 月8日 “Eliminating lymphatic filariasis in the Pacific”

・G7 Advocacy に関する意見交換のためAmber L. Cashwell (SABIN) 氏と面談、12 月17 日、東京

・山梨大学 意見交換、2月1 日、 山梨大学、 山梨

・佐々 学 生誕100 年記念式典・講演会 参加、3月14 日、八芳園、 東京

・国際協力機構(JICA)/ 青年海外協力隊(JOCV)感染症対策アドバイザリー・グループ参加

3.日本国内向け情報発信、啓蒙活動
・自衛隊中央病院 高等看護学院 第56 期看護学生研修、4月23 日、 長崎大学

・「感染症とたたかう長崎大学展」、4月25 日~5月28、長崎歴史文化博物館、 長崎

・お茶の水女子大学OG 会 講演、5月9日、 お茶の水女子大学

・キンチョウYahoo!Japan サイト「蚊が媒介する感染症予防のために まじ蚊!通信 まじめに楽しく蚊が媒介する感染症対策」内、対談記事「蚊の専門家に聞いてみた」5月18 日~9月30 日掲載

・イカリクリンネス大学特別記念講演会 講演「熱帯病とたたかった30 年」、6月10 日、 ホテル日航東京、 東京

・玉川学園スーパーグローバルハイスクール(SGH)グローバルキャリア講座 講演、6月13 日、玉川学園、 東京

・世界モスキートデイ「蚊と蚊がもたらす病気を知ろう」開催、8月20 日、 長崎大学、 長崎

・長崎大学熱帯医学研究所市民公開特別講座「蚊と蚊がもたらす病気を知ろう」講演「蚊がもたらす病気について/日本から世界へ」、8月29 日、 長崎大学、 長崎

・読売新聞10 月18 日【教えてyomiDr.】「顧みられない熱帯病」制圧へ連携 日本も貢献

・産経新聞 産経ニュース10月20 日【ノーベル賞受賞】「人類VS 寄生虫の闘いに武器をくれた!」北里大・大村特別栄誉教授の業績を医師らが激賞

・第3回BMSA 近畿地域拠点学術集会「熱帯病( 昆虫媒介病)の国際情勢と対処法」 講演「熱帯病( 昆虫媒介病) の国際情勢」、12 月11 日、 大阪医科大学、 大阪

・桐朋女子高等学校 講演、1月20 日、 桐朋女子高等学校、東京

・山梨大学 第五回学長招待特別講演会 講演「WHO 顧みられない熱帯病対策:世界リンパ系フィラリア症制圧計画-大村智博士のイベルメクチンを使った疾病対策の話」、2月1日、 山梨大学、 山梨

・平成27年度沖縄県委託事業「沖縄感染症研究拠点形成促進事業」動物媒介性感染症対策の沖縄での施策提言とネットワーク形成に関する研究 公開シンポジウム「顧みられない熱帯病(NTD) 制圧」講演「フィラリア症の世界制圧と日本の貢献~ WHO によるイベルメクチンを用いたフィラリア症抑制の取り組み~」、2月7日、 パシフィックホテル沖縄、 沖縄

・第34回日本国際保健医療学会西日本地方会ユースフォーラム「途上国のクスリの未来~これからの途上国医療とクスリの話をしよう~」講演「顧みられない熱帯病の薬剤投与による対策」、2月27 日、川崎医科大学、岡山

・第9回長崎大学大学院医歯薬総合研究科リーディング大学院「熱帯病・ 新興感染制御グローバルリーダー育成プログラム」市民公開シンポジウム「リーダーシップを考える2016:困難なプロジェクトを成功に導くリーダーシップ」講演、2月29 日、 長崎大学、 長崎

・「APEX CLUB」第39号 ”ケニアのツェツェバエキャンプ

・「クリンネス」2016 年2月号 “熱帯病と闘う日々”

・「佐々学生誕100年記念誌 佐々学先生と私」” “HUMAN FILARIASIS” の佐々先生”

・ランチタイムセミナー開催、 毎月第3金曜日、 長崎大学, 長崎

4.熱帯病分野の人材育成
・熱帯医学研修過程「WHO 顧みられない疾病対策への取り組み」、6月1日、 長崎大学

・熱帯医学専攻MTM「NTD Filariasis Eradication program」、6月1日、長崎大学

・リーディング大学院For nurturing global leaders in tropical and emerging communicable diseases, 6月2日, 長崎大学

・愛知医科大学 , 6月8日

・リーディング大学院 For nurturing global leaders in tropical and emerging communicable diseases, 12 月14 日~ 15 日, 長崎大学

・東京大学「MDA/Preventive Chemotherapy – a strategy for Neglected Tropical Diseases (MDA)」, 1月27 日, 東京大学

・WHO インターンシップ/ ボランティア派遣 支援相談窓口

2016年度も国内外での活動をさらに広く展開していきます。長崎大学においてもランチタイムセミナー( 毎月) および世界モスキートデイイベント(8月) を引き続き開催します。また新たに、「一盛和世フィラリア塾」( 全6回)では、グローバルな視野を持つ人材の育成を目的として30年間熱帯病との闘いを世界で繰り広げてきた経験と哲学を語り始めました。

これらの活動にあたり、長崎大学国際連携研究戦略本部、長崎大学熱帯医学・グローバルヘルス研究科、長崎大学熱帯医学研究所、長崎大学地域教育連携支援センター、より多くのご支援、ご協力をいただいておりますことを心より感謝申し上げます。

CICORNニュースレター第7号(平成28年6月号)掲載記事
http://hdl.handle.net/10069/36599