アフリカを中心に、保健医療分野における人材育成推進のための研修を実施

平岡 久和 准教授
国際連携研究戦略本部

長崎大学では、国際協力機構(JICA)による研修員受入事業の研修受入を行っています。平成28年度はCICORNでは3件の研修を受入れ、アフリカ15ヵ国を含む合計19ヵ国、32名の研修員が長崎を訪問。長崎を中心に日本の保健医療の状況、サービス提供の体制などを学び、祖国での保健医療状況の改善に力を尽くすために戻っています。

  1. 課題別研修
    アフリカ地域 地域保健担当官のための保健行政 (B)フランスの植民地時代の影響を受けて公用語がフランス語である国である9ヵ国から、地域住民の健康向上に努める行政官10名を約1ヵ月間受け入れました。研修参加者は、東京で中央政府による保健医療行政の全体像を学んだほか、長崎では地域、特に離島において、地域住民の健康を改善するためにどのような取り組みが行われているのか、本土と離島での医療体制の整備や連携がどうなっているのかを実際に見聞きして、祖国で参考になる点を検討しました。

    研修の結果、行政と医療機関を結ぶ情報システムの構築、より安全な出産ができるような医療機関同士の連携の強化など、参加者は帰国後に出来得る活動を各々考え、その実行を他の参加者に発表・共有を行いました。限られた資源で保健医療サービスを提供せざるを得ないアフリカでどのように工夫して効率的かつ効果的に行えるのか、真剣に考えた研修参加者の今後の活躍が期待できます。

    離島の医療機関の状況を見学 現状分析を深めて発表
  2. 課題別研修 感染症対策行政
    アフリカ6か国とアジア・大洋州4ヵ国で、マラリアや結核といった感染症の対策に取り組む行政官計12名が約3週間にわたって研修を受講しました。東京では厚生労働省などを訪問し、国が法律をどのように整備して各地での感染症対策の体制を構築しているのかなど、日本全国規模での制度や体制を学びました。長崎では、住民の中で感染症が起こった際にどのように対応しているのか、まだ大きな課題である結核に対して患者発見、治療を具体的にどう行っているのかなど、より具体的な感染症対策への理解を進めました。

    研修参加者は、自国(多くは熱帯地域)で流行する感染症と日本の感染症は種類が異なるという点もあるものの、日本の制度(法律、組織、情報システムなど)を参考にどのように感染症対策の実践を改善していくことができるのかということを考えて計画を立案しました。インフルエンザやマラリアといった感染症の発生状況の確認体制を強化するなどの計画は、研修参加者間で共有され、他の参加者からその計画をこうしたらもっとよくなるという活発な意見交換を経てブラッシュアップが行われ、実行可能性を高められていました。

    検査室を熱心に見て回る
  3. 国別研修 モザンビーク保健教育
    アフリカ南東部に位置するモザンビークから、看護師、助産師、薬剤師といった医療従事者の育成に取り組んでいる保健省や州の人材局や育成学校の関係者10名が長崎に来て、2017年1月に約2週間の研修を受講しました。モザンビークから一度にこれだけの人数を受け入れたのは2 年ぶりです。

    モザンビークでは病院や地域で業務にあたっている医療従事者を継続的に教育し、能力向上を図るためのJICAの技術協力「保健人材指導・実践能力強化プロジェクト(ProFORSA2)」が2016 年5 月から開始されました。同プロジェクトで日本人専門家らと共に仕事をしている関係者が来日し、日本の医療従事者の制度、病院で勤務する人材の継続教育の制度と現状などを学びました。以前は医療従事者の学校教育を推進するJICA 技術協力が行われており、その関係者が長崎に来ておりましたが、ProFORSA2 が開始してから初めての来日となり、2 年ぶりの研修となります。

    本研修においても参加者は、勤務している医療従事者の教育を帰国後にどのような方策で進めて高い医療サービスの提供を行っていけるのか、それぞれの立場で何ができるのかを考えました。研修参加者の活躍により、モザンビークでの健康状況の改善が進むように、期待したいところです。

    教育用シュミレーターを体験 受入先から温かく迎えられた研修員

終わりに
今回は3 件の研修を紹介させて頂きましたが、このようにアフリカから多くの研修員が長崎での研修で学んでいます。2016 年はケニアのナイロビにてアフリカ開発会議(TICAD)が開催されて長崎大学も積極的に参加したほか、長崎大学によるアフリカ展開50 周年でもありました。今後ともアフリカの開発や人びとのより良い生活のために協力を継続するとともに、アフリカ以外の地域の国々からの人材の育成にも取り組んでいきます。

各研修の実施は、多くの機関のご協力を得て実現しています。それぞれの受入機関での研修内容はもちろんのこと、温かく迎え入れて頂いていることで、研修員は日本・長崎に対して非常に良い思いを抱いて帰国しています。ここに改めて受入機関の皆様方に感謝申し上げます。

CICORNニュースレター第8号(平成29年3月号)掲載記事
http://hdl.handle.net/10069/37064