インドネシア草の根

早瀬 隆司 教授
水産・環境科学総合研究科

持続可能な開発あるいは社会づくりのためには人間と人間、人間と自然の間での関係性の改善が課題である。本プロジェクト(JICA草の根2010年度~2012年度)では、インドネシアの社会的格差の根底に近い地域におけるコミュニティにアプローチし、小学校を中心とする地域でのネットワークを強化し、自助的活動を創発及び支援し、持続可能な開発に係る将来的な問題解決に貢献しうる人材を育成することが主要な狙いである。小学校での環境管理システム構築や緑化への支援から取り組み、周辺の地域自治会、大学、中学へと活動のネットワークを広げてきた。コミュニティ(自治会)での環境問題についての話し合いの結果、彼らの抱えている最優先の課題はコミュニティ内を流れる小川の汚染とその洪水時における汚水氾濫への対応であることが分かった。政府による下水道の整備を数十年期待してきたけれども一向に進まず、彼らの生活環境は見捨てられたままになっている。そこで、コミュニティとして自分達で出来る自助的活動から取り組みを始め、水質のモニタリングと結果の公表、川の清浄化を訴える広報活動、垂れ流しの公衆便所に代わるメタン発酵型の密閉型トイレの設置等の取り組みが始まった。又、地域内で緑化や散乱ゴミに対する美化の活動等が芽生えた。

このような活動は行政の耳に入ることとなり、ネットワークの拡大はさらに行政にも影響を及ぼしつつある。ジャカルタ市(南ジャカルタ地区)は自治会に対してごみ回収用にリヤカーとゴミ袋の提供を申し出た。さらに、この活動は、長崎市と連携しながら取り組んでおり、今後長崎市の行政や市民の人的資源へもネットワークを広げていく予定である。社会の根底からの人々への働きかけが、今後どのような成果に結びついていくのか、ワクワクしながら取り組んでいる。

関係者のネットワーク
小川の上にあるコミュニティーの垂れ流し公衆便所 コミュニティー内の氾濫を繰り返す小川

CICORNニュースレター第1号(平成25年5月号)掲載記事
http://hdl.handle.net/10069/34012