– 海外拠点便り –環東シナ海研究拠点

征矢野 清 教授
水産・環境科学総合研究科

東シナ海は、海洋生物・海洋資源の宝庫であり、日本にとって最も重要な海域の一つです。また沿岸国である中国、韓国、台湾にとっても同様に重要な海洋資源を確保するための海域となっています。しかし、東シナ海は沿岸域に世界有数の人口密集域を抱え、人間活動の影響を極めて受けやすい海域でもあります。化学物質や栄養塩の増加、海水温の上昇など、この海域の海洋環境に変化が起きており、海洋生物の次世代生産や安全性への影響が懸念されています。環東シナ海環境資源研究センターは、このような東シナ海の環境変動とその影響を把握し、環境の回復と保全、さらには生物資源の生産性と安全性の確保に向けた研究を推進するための機関として活動しています。現在、文部科学省特別経費による研究プロジェクト「安全な海洋生物資源の利用に向けた学際的フィールド研究の国際展開 —東シナ海をモデルとした生態系の健全性の診断と監視—」を柱に据えて、東シナ海研究に取り組んでいます。

東シナ海の生物資源の安全性を確保し、これを持続的に利用するためには、沿岸国が協力し環境の改善と資源管理を進めなければなりません。そのためには、この海域の水産・海洋研究を、沿岸国である韓国・中国・台湾と共同で進める必要があります。また、これらの国が連携して、海洋問題・環境問題に対して共通した認識と視点を持った若手の研究者を育成することも大切です。そこで、韓国済州大学校、中国上海海洋大学、台湾国立台湾海洋大学、および琉球大学と東シナ海海洋学水産科学教育研究コンソーシアム(通称5大学フォーラム)を立ち上げ、環東シナ海環境資源研究センターがその事務局となり、共同での教育・研究活動、国際シンポジウムの開催企画などを行っています。さらに、これらの活動を活発化するため、済州大学校、上海海洋大学、国立台湾海洋大学と長崎大学の双方に交流推進室を設置しました。現在、これらの交流推進室では共同研究の推進と学生交流、留学生の受け入れ補助や大学情報の発信を行っています。

大学院水産・環境科学総合研究科および環東シナ海環境資源研究センターが、東シナ海をモデルとして進めている水産科学・海洋科学・環境科学の研究成果は、世界の水産・海洋問題を考える上でも必要不可欠な情報となります。今後は、ベトナムをはじめとする東南アジア地域へも活動を広げるとともに,世界に向けた情報発信を積極的に行っていく必要があると考えています。

CICORNニュースレター第1号(平成25年5月号)掲載記事
http://hdl.handle.net/10069/34012