~海外拠点便り~ 環東シナ海研究拠点

石松 惇 教授
水産・環境科学総合研究科

本拠点では日中韓台湾が連携した東シナ海の環境と資源を取り巻く諸課題の解決に向けた国際共同研究と並行して、日本への魚介類輸出元として重要な東南アジアの国々とも連携を強化しようとしています。特にベトナムは、養殖漁業生産高世界第3 位を誇り、ベトナムで生産された魚介類(特にナマズの仲間とエビ類)は、日本を含む全世界に輸出され、世界の食料生産に貢献するとともにベトナムの経済発展を支えています。メコンデルタの沿岸域には、広大な養殖地帯が広がっていますが、そこではエビ類(ブラックタイガーとバナメイエビ)に加えて、ハゼ類の仲間(現地名Cá kèoカケオ)の養殖が盛んに行われています。いま、私たちはベトナム・カントー大学の研究者と協力して、この地域の養殖業に関する2つの課題の解決に取り組んでいます。

Cá kèo の養殖は、天然の稚魚を用いて行われるため、近年では養殖の拡大に伴って資源の枯渇が懸念されるようになりました。これが第一の課題です。私たちは、天然の稚魚に依存しない養殖方法の確立(人工種苗生産)を目指して、この魚の再生産生態の調査を行っています。調査を始めるまでは、Cá kèo の産卵場所は沖合、沿岸あるいは淡水域なのか、皆目わかっていませんでしたが、この2 年の調査によって淡水域の可能性は否定され、恐らく沿岸ではないかと考えられるようになってきました。その推察を裏付けるために、今後も、メコンデルタで捕獲される天然のCá kèo 仔稚魚の分析に力を注ぐ予定です。天然における再生産の姿が明らかになれば、その知見に基づいて、実効性の高い種苗生産手法の開発を加速できると期待されます。

また、2つめの課題として、エビ養殖池とCá kèo 養殖池がもたらす環境影響の比較を行っています。特にCá kèo養殖は、養殖池の水質管理がほとんどなされておらず、水中溶存酸素が夜間にはほとんどゼロになることなどがわかってきました。Cá kèo は空気呼吸の能力をもつトビハゼやムツゴロウの仲間であるため、エビや他の魚に比べて水中の貧酸素には強いのですが、過度な有機物負荷は、Cá kèo の健全な発育を阻害し、病気の発生を高め、最終的には養殖の経営にも悪影響を与えると危惧されます。隣国タイのエビ養殖は、かつて病気の蔓延によって大打撃を受けましたが、それは東南アジアの人々が適切な養殖環境の維持と管理の重要性に気づく好機となりました。南ベトナムにおけるCá kèo 養殖は、約10年前から盛んに行われるようになったばかりで、その環境負荷の実態は未解明です。私たちは、その実態解明を目指し、ベトナムにおけるCá kèo 養殖が今後も持続的に発展していくのに必要な方策を提言できるように、フィールド調査を続けています。

CICORNニュースレター第2号(平成25年8月号)掲載記事
http://hdl.handle.net/10069/34013

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