海外拠点実地研修を終えて

井上 篤
財務部財務企画課
岩永 麻美
国際連携研究戦略本部

平成28年3月4日から8日までの期間、熱帯医学研究所ベトナム拠点において、スタッフディベロップメント(SD)海外拠点実地研修を実施した。以下、簡単な日程と参加者の所感等を報告する。

3月4日(金)日本出国、ベトナム入国。ベトナム拠点到着後、拠点勤務の齋藤主査と3月6日に行われるハノイ市民公開講座準備に関する打ち合わせを行った。

3月5日(土)待機日

3月6日(日)ハノイ市民公開講座 。開催場所のデーウホテル到着後、部屋を確認すると契約書に記載されていた部屋とは別の部屋が用意されていたというトラブルがあったが、ホテルマンと協力して来客誘導を行うことで対応した。公開講座では森田公一熱帯医学研究所長と東北大学の中島一敏先生が講演を行い、約40人が参加した。

3月7日(月)ベトナム国立衛生疫学研究所(NIHE)の研究室を見学後、齋藤主査の銀行業務のためハノイの東京三菱UFJ 銀行へ同行。その後、5月16 日開催予定のシンポジウム打ち合わせ、費用化書類に関する事務打ち合わせを行った。井上氏ベトナム出国、日本入国。

3月8日(火)齋藤主査と確認しながら費用化処理をすすめた。

3月9日(水)同様に費用化処理をすすめた。

3月10日(木)本来は帰国予定日であったが、あと1日あれば2月の証拠書類を全て長崎に持って帰れると感じたため急きょフライト予定を1日ずらし、費用化処理を実施し、無事に2 月分の証拠書類を持ち帰ることが可能となった。

3月11日(金)ベトナム出国、日本入国。

<岩永所感>
急遽決まった出張で、日本での仕事が滞ってしまうのではないかと不安を感じていましたが、実際ベトナムで仕事をしていて、パソコンさえあればベトナムでも日本とほぼ同様の仕事はできるということがわかり、なにより現地で齋藤主査がどのように仕事をおこなっているか、現地の慣習やベトナム人研究アシスタントの現状などが確認できてとても有意義な出張でした。費用化処理も日本から齋藤主査へ催促してPDF を送ってもらってそれを確認して、修正依頼を出してまた返って来るのを待って・・・という流れよりも現地で原本を確認して、聞きたいことがあればその場で齋藤主査に確認し、現地アシスタントへの修正依頼も私自身がお願いできるのでとても捗りました。もしまたこのような機会に恵まれればベトナム文化や現地での仕事の理解を深めるため積極的に参加したいと思いました。

<井上所感>
まずはベトナムで見た風景について。ベトナムの交通事情は、一車線の道路にも関わらず車とバイクが2列3列になって走行しており、歩行者の数十センチ横を車が平然と通過していた。大通りでは常に誰かがクラクションを鳴らしており、日本人の感覚で言えばまさに無秩序そのものであった。空気は大気汚染が深刻で、日本と比べてひどくかすんでいた。建物は日本ではまず見ないマッチ箱を積み重ねて作ったような形状の家々が並んでおり、私が見た建設中と思われる高層ビルは、地面から四本の柱を立ててその上にビルを乗せているような作りで、素人の私から見ると大丈夫なのかと心配になるようなものだった。帰国後、私のベトナムでの思い出話を聞いて、そんな危ないところには行けないと言う人もいたが、その風景の感じ方は人次第であり、海外経験がほとんどない私にとってはテレビでしか見ないような光景の連続で、刺激的なことばかりだった。

次にベトナム料理について。現地では、フォー、ブン・チャー(米麺と甘酸っぱい付けダレに揚げ春巻きや野菜を入れて食べる料理)、ザウ・ムォン・サオ・トイ(空芯菜のニンニク炒め)、料理の名称は分からいが、トマトベースのスープに揚げ豆腐や牛すね肉、野菜、香草などを入れて食べる鍋など様々なベトナム料理を食べた。ベトナム料理は主に中華料理の影響を受けているようであるが、中華料理のように辛すぎたり、味付けが濃かったりすることもなく、どれも日本人の口にも合うもので美味しかった。海外に行くと野菜をなかなか摂れないことが多いとのことだったので、野菜が豊富にとれるベトナムはその点で苦労しないと思った。また、パクチーなどの香草が苦手な人でも、スーパーに行けば日本の食材も多く揃っており、日本料理のお店もあるので苦手を避けて生活することも可能だと思う。

次にベトナムの物価について。お金の単位は研修時のレートで1円が200 ベトナムドン弱だった。日本円に換算するには、値札の数字からゼロを2つ取って半分にするという単純な計算が必要だが、基本的にベトナムは物価が安いので、最後の方はその計算も面倒になった。そのくらい物価は安い。お昼にベトナム拠点の先生方に連れて行ってもらった現地の人が利用する飲食店では大盛のブン・チャーと春巻きを食べて250円ほど。ビールはお店で飲むと100 円ちょっと、スーパーで缶ビールと買うと60円ほどだった(ちなみにベトナムのビールはやや味が薄く、よく言えば飲みやすい)。しかし、油断していると外国人向けのレストランや格式高そうなベトナム料理店で3,500~4,000 円ほど請求され、青くなることもある。現地人向けと外国人向けの価格設定があると思われる。

海外拠点の業務で印象的だったのは、日本と違って予定通りに仕事が進まないことが多いということだ。研修中の短い間だけでも、市民公開講座の会場として押さえていた部屋と違う部屋をホテルが準備していたり、先生用に手配していたタクシーが時間通りに来なかったりというトラブルがあった。日本では、働く上で段取りの大切さを痛感することが多々あるが、ベトナムでは、起こるかもしれないトラブルを予め踏まえた上での段取り、そして予測できなかったトラブルが発生した際に臨機応変に対応できる力が必要だと感じた。

また、そのような対応が問われる現場の業務をする一方で、ベトナム拠点と日本の海外拠点係をつなぐパイプ役もこなさなければならない。ベトナムで総務系や会計系(特に出納業務は大変そうだと感じた)の業務を行いながら、日本での業務の進捗を把握して連携をとる、これを事務職員一人で行うという話を聞き、素直にあと一人事務職員がいればいいのにと思ってしまった。

研修期間は移動日を含めて5日間だったものの、普段の所属部署での業務から離れ、このような海外拠点での研修に参加し、様々な方と出会い、仕事に対する考え方や体験談などを聞けたのはとても良い機会になった。ベトナム拠点では、先生と事務職員、そして現地のアシスタントの方々との距離が近く、皆さんが同じ方向を向いて仕事をしている印象を受けた。これは長崎大学という一つの組織で共に働く上で、どの部署でも大切なことだと思う。お手伝いをさせていただいた市民公開講座の中で、感染症分野の第一線で活躍される先生方の話を聞きながら、ご自身の研究分野についての意識の高さに驚くとともに、私も心が奮い立たされる思いだった。新聞報道等で、世界で感染症の流行が発生すると、特別対策チーム等の一員として奔走、ご尽力されている本学の先生方の記事を目にするが、そのような先生方と同じ組織で働くことをとても誇りに感じる。その先生方の研究に対する思いを理解していれば、事務職員の立場でも仕事への取り組み方が変わると思う。現在の部署では先生方と関わる仕事はあまりないが、今後先生方と関わる部署に異動した場合はそのスタンスを大切にしなければならないと感じた。

最後にSD 研修実施にあたり、研修を受け入れていただいた熱帯医学研究所長、ベトナム拠点の山城拠点長、長谷部教授ほか教職員みなさまのご協力に感謝します。また、総務担当理事及び人事課より「SD 研修支援事業」として予算配分いただき実施できたことに改めて御礼を申し上げます。今後の事務職員の国際人材育成の一助になることを祈念します。

CICORNニュースレター第7号(平成28年6月号)掲載記事
http://hdl.handle.net/10069/36599