長崎大学LAVICORDのコンポーネント3とくに「水産食品の高付加価値化のための研究開発」に関するプロセスと成果についての総評

北里大学海洋生命科学部特任教授 渡部終五
2016年9月13日

今回、長崎大学LAVICORDからご招待を賜り、2016年7月19日~23日の日程でケニアのナイロビおよびキスムを訪問する機会を得た。関係各位に厚く御礼申し上げる。とくに、ビクトリア湖に面するキスムでは筆者が専門とする水産利用学に関する種々の成果をご紹介頂いたので、以下にその感想を述べさせて頂く。

水産物の加工による高付加価値化は持続可能な水産業の発展には欠くことができない課題である。しかしながら、ケニアでは小型魚は燻製化、天日乾燥、塩蔵など、一方、大型魚は凍結、冷蔵、空揚げなどに利用されるのみで、水産加工品の高度開発が未だ十分には試みられていない。そこで、長崎大学LAVICORDでは新たな加工・保蔵方法として練り製品(蒲鉾)製造の提案を行った。対象魚はビクトリア湖産のスズキ目アカメ科魚類Lates niloticus(ナイルパーチ)(図1)およびティラピアOreochromis niloticusである。日本で流通している一般的な揚げ蒲鉾のほか、サマキ(Samaki)(図2)と呼ばれる現地の食品に似せた食感や風味に変えた揚げ蒲鉾も製造し、とくに後者は現地でも評判となっている。

(図1)ビクトリア湖産巨大ナイルパーチ (図2)サマキ風揚げ蒲鉾

練り製品は製造時に味付け、テクスチャー、形などをいろいろ変えることができる便利な水産食品である。製造方法は家内工業的な小規模生産のために現地でも購買可能な調理器具を利用しており、魚肉の水晒しの工程は省略している。製品は室温で数日、冷蔵で2週間は消費可能である。

試食したサマキ風揚げ蒲鉾はもちもちした食感で、普段、日本の揚げ蒲鉾のすっきりした歯ごたえに親しんでいるものにとってはやや取っ付きにくさを感じたが、風味はとくに違和感はなかった。先述のように現地ではサマキ風揚げ蒲鉾が評判とのことであるので、本プロジェクトは所期の目的が十分に達成されており、素晴らしい成果である。一方、魚肉を水晒ししたときにどのような品質の練り製品ができるのかに興味が持たれる。また、製品の単位重量当たりの値段が日本での揚げ蒲鉾のそれと大きく変わらず、現地ではレストランなどで提供される嗜好品になるのではなかろうか。このような形態の販売でも漁業従事者の家計に余裕ができるようになれば水産業の発展に貢献するので、もちろん本プロジェクトの成果を疑うものではない。

一方、一般的なケニア国民にも良質な動物性タンパク質をこのような水産加工品で提供するために、ナイルパーチやティラピアのような鮮魚でも売値の高い魚種より、もっと製品価格を抑えることができるような原価の安い魚や未利用魚で練り製品を製造する技術を開発できないであろうか。また、水産加工品の製造を現地の小さな規模の漁業従事者グループが行うのであれば今の形態で良いと思われるが、ある程度の規模の事業化を行うとすれば、原魚が確保できる資源量があるかどうかの調査も必要と思われる。海産魚も視野に入れる必要があるかも知れない。さらに、前述のような燻製、天日乾燥品(図3)、塩蔵品の製造技術がどの程度のものかの情報を持ち合わせていないが、その技術を改善する余地がないかどうかも知りたいところである。これらの課題解決に長崎大学LAVICORDに期待するところが大である。

(図3)ビクトリア湖産小魚の天日干しと魚体の拡大図