コロナ期・ポストコロナ期のグローバル化と大学(第2回)

皆さんは国際ボランティアと聞くと何を想像しますか?多くの人が実際に途上国に行って現場でばりばり働いている人たちを想像するのではないでしょうか。でも実のところ、国際ボランティアは何時でも何処でも誰でも、そしてコロナ禍でもできるんです。例えば、要らなくなった教科書を寄付するだけでも良い。その教科書を誰かに販売して得たお金を途上国の子供たちに寄付するお手伝いをするだけでも良い。それだけで世界の誰かの就学を支援できるんです。長崎大学にもそのような取り組みを行う学生団体があります。STUDY FOR TWO(SFT)です。本企画第2弾となる今回は、そのSFT長崎大学支部を取材しました。

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一般社団法人STUDY FOR TWO(SFT)は2010年に設立された学生団体で、キャンパス内で不要になった教科書を集め定価の半額で販売し、その売上をラオスやバングラデシュの学校を支援する団体に寄付しています。設立したのは当時大学生だった石橋孝太郎さんで、ラオスを訪問した際に現地で教育を受けられない子供たちがたくさんいると知ったのが活動を始めるきっかけになったそうです。大学生は就活にも有利になるので少しでもボランティア活動をしたいし、それによって途上国の学生を支援できるならWin-Winではないか。For meの活動が、世界のどこかにいる誰かのため―For Two―になる。SFTの名称にはそのような意味が込められているそうです。

SFTは日本の大学の多くに支部を置いており、長崎大学には長崎大学支部と長崎大学片淵支部の2つの支部があります。今回インタビューに応じてくれたのは、長崎大学支部長の甲斐さん、同じく長崎大学支部長の櫻井さん、そして広報担当の湯淺さんです。甲斐さんは、中高時代の先輩の強い勧誘があり大学直後から活動を始め、現在は中国・四国・九州地区の代表も務めています。櫻井さんも、1年目の途中から先輩の誘いで参加したそうです。参加当初は、ラオスとバングラデシュへのスタディーツアー(後述)に魅力を感じていたそうですが、残念ながらコロナ禍でまだ実現できていないのだとか。湯淺さんは、学校に行けない途上国の子供たちのドキュメンタリーを観て、何かしたいけれど何をすれば良いかわからないと思っていたところでSFTに出会ったそうです。

甲斐さん 「全国の支部に友達ができるので、とても楽しいです。皆で「売上200万円」とか目標を掲げて活動しているんですが、その一体感が好きです。」

長崎大学支部は、甲斐さんたちの1年先輩が立ち上げて4年目です。その4年生は今は就活もあり活動を休止しており、現在の部員は24名程度。コロナ禍でキャンパス内での対面での活動が制限されている中、どのような影響が生じているのでしょうか。

櫻井さん 「もともとは生協の横で看板を掲げたりして教科書を集めていましたが、コロナ禍でそれができなくなり、個人個人で友人や先輩に声をかけて集めています。長崎大学支部は発足してまだ間もないので、1年目、2年目は販売する教科書の在庫が少なく、売上も1万円程度でした。4年目になり在庫が充実し始めたので、コロナ禍にもかかわらず、これまでで一番多い2万円を売り上げました。(県内での感染拡大が収まり)キャンパス内でもようやくチラシの配布は許可されましたし、後期の授業に向けた教科書販売は対面で再開できるのではないかと期待しています。」

SFTの文教キャンパス内での活動の様子。写真提供:SFT長崎大学支部

SFTの最大イベントはスタディーツアー。櫻井さんも、自分がボランティア活動を通じて集めたお金がどのように現地で使われているのか、自分の目で確認できるのがSFTの魅力だと言います。3人の中では甲斐さんが、唯一1年生の時にスタディーツアーに参加しました(参加費は自費)。

甲斐さん 「2019年夏にバングラデシュに行き、現地で3日程度のプログラムに参加しました。バングラデシュの学校にはRoom to ReadというNPO団体を通じて支援しており、その団体の案内で支援した学校を見に行きました。自分たちの支援で建った校舎には、SFTの名前も刻まれた石碑のようなものが建っていて感動しました。」
Ms. Kai: I went to Bangladesh in the summer of 2019 and joined a school visit program for about three days. SFT supports the school through Room to Read, a non-profit organization. The organization showed us the building that our contributions supported. It was impressive to see that the name of SFT engraved on a monument near the building (see the photo below).

スタディーツアーの様子。写真提供:SFT長崎大学支部
SFTが支援した学校の校舎に飾られている説明文。写真提供:SFT長崎大学支部

現在、コロナ禍でスタディーツアー再開の目途はたっていないそうですが、オンラインでラオスやバングラデシュについて学ぶイベントを開いているそうです。たとえば「おうちでラオス」というイベントでは、協力している支援団体の方が住んでいるラオスの市場の様子を紹介してくれたりしたそうです。

皆さんの将来の目標もお聞きしました。

甲斐さん 「自分は教育学部で学んでいますが、日本の学校に就職する予定はなく、引き続き途上国支援に関わっていきたいです。紙媒体ではない教材の開発に関与し、より多くの子供たちの教育機会を創出していきたいです。」

櫻井さん 「自分は同じ教育学部で、このまま長崎県内の学校に就職したいです。教師になると忙しくてこのような活動はできないかもしれないけれど、そういう活動に参加したいという学生を支援していきたいです。」

湯淺さん 「自分は医学部を卒業し看護師になり、まずは日本で苦しんでいる人たちを助けつつ、将来は何らかの形で国際ボランティア活動に関与したいです。」

何かしたいけれど何をすれば良いかわからないという人はたくさんいます。その中で自分に出来ることに出会い、実際に活動に飛び込んでいく勇気がある人はごく一部です。SFTは、その点、使わなくなった教科書を寄付するという、とても簡単な一歩から始められるところが大学という場にぴったりハマる感じがします。もっと参加したければ、教科書集めに協力したり、販売のお手伝いをしたりして、そしてスタディーツアーに参加するというステップアップができます。そして卒業後はその経験を活かし、もっと大きな一歩を踏み出すことにもつながるのでしょう。

STUDY FOR TWO長崎大学支部 Twitter:https://twitter.com/STUDYFORTWO5